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夜這いの民俗学・夜這いの性愛論

夜這いの民俗学・夜這いの性愛論

人気ランキング : 10,886位
定価 : ¥ 1,260
販売元 : 筑摩書房
発売日 : 2004-06-10

価格 商品名 納期
¥ 1,260 夜這いの民俗学・夜這いの性愛論 通常2〜3日以内に発送
赤松啓介の価値

単行本のときはなかなか気恥ずかしくて買えなかったし、結構な値段だったのでつい遠慮していたのだが、文庫本になるとなぜか気軽に買えた。なかなかの良書であった。
赤松啓介の語りはなかなかの名調子で、読み物としても面白い。一方学術書としては、明治から昭和にかけての村の夜這い民俗事例の再現のみでなく、都市商業地域の性習慣も扱っており、貴重な証言だと思う。赤松啓介の民俗事例を科学的に検証するのはいまではおそらく不可能であろう。民俗事例だと意識しながら話を聞いていたのはおそらく日本では彼一人しかいなかったのだから。しかし彼が悪いのではない。その方面を「無視」した柳田民俗学が悪いのである。赤松啓介は歴史の中に伝説として埋もれたかもしれない民俗事例を「それはあった」と言い切るだけの話として自ら体験しながら採取した事、それだけで彼の価値は大きい。
ただ、惜しい。あと5人ほど赤松啓介がいたらなあ、と切に思う。性民俗に溶け込める庶民性と、民俗学という科学的知識を持った知性を併せ持った人があと数人いたなら、「夜這い」から現代の「若者のセックス観」に至る道筋を歴史的にたどる事が出来たろうに。「今の若もんの性は乱れきっとる」などというもっともらしい意見に対して、説得力のある反論も出来たろうに、と思う。

話半分

 「夜這い」については、徒らな過去賛美の口調で語られすぎた。赤松の場合、昭和初期の都市下層民の世界での体験に基づいた著作なので、学問的価値には疑問符がつく。しかし文庫版解説の上野千鶴子は少しも反省の色なく、日本人はおおらかな性習俗を忘れた健忘症の国民なのか、などと書いている。「国民の集合的記憶」などというものがあるかの如く想定すること自体、愚かで非科学的なことと言わねばならず、上野と赤松を引き合わせるなど、大月隆寛も罪なことをしたものだと思う。
小谷野敦

近代の性風俗がわかる奇書

たしかに、民俗学というよりこれは、おじいさんの昔話なような・・・。
「一夫一婦制」だの「貞操・純潔」だのが、近代明治国家が戸籍や税収のために創出したものだ、という視点はおもしろくよくわかった。ちょっと目から鱗だった。
ただ、一般性はというと、それ以前や播州関西以外の地方での風習はわからない。
また男性視点からの話なので、女性視点からはこの夜這いがどうだったのか。
赤松啓介あと5人+女性5人必要かも。
とはいえ、明治〜昭和の夜這い風俗をまとめた奇書とはいえそう。本人が実践参加しているのが強み。田舎も、都会(奉公人の生活)もカバーしている。

日本人本来の性意識

性に対する価値観や性行為の実態を調べるのは現代でも難しいと思う。協力してくれる人は限られるだろうし、誰もがあからさまに真実を述べてくれるとは思えないからである。しかし、本書で著者が自らの体験を通して描き出した日本人の性は、かなり実態に即したものだと思える。なぜなら、その方が現代人の性を説明する上で都合の良いことが多いからである。
本書で述べられている、男女とも13才くらいになると大人が性行為を実際に教えたことや、貞操観念などと言うものが存在しなかったことなどからすると、現代の性の乱れと言うものは、あくまでキリスト教的倫理観に照らし合わせるからそう見えるのであり、本来の日本人の性意識からすれば特に乱れているわけでなく、逆にキリスト教的倫理観の押しつけが性犯罪を生み出しているように思えるのである。キリスト教的倫理観の押しつけと言うよりも、日本人自らが作り上げてしまった性の神話に、自らが押しつぶされ、様々な歪みを見せていると言った方が良いかもしれない。日本人は性と言うものについても再構築する必要があるのではないか、と本書を読んで思った次第である。
民俗学とか性愛論とか言ったものに囚われず、著者の「性の自叙伝」として本書を著した方が、より日本人の性を鮮やかに浮かび上がらせることが出来たのではないかとも思う。

体験的「夜這い」民俗学

 この内容は決して空想物語ではなく、著者が自ら体験した夜這いの実態を書いているので、真に迫っています。しかし、語り口調がどこか牧歌的な雰囲気を持っているので、おっとりと読んでしまいました。
おそらくは著者の記憶の中で誇大に表現している部分もあるでしょうが、多分(としかいえないが)大方の実体を把握しているのではないでしょうか。
特に「柿木はありますか?」から始まる後家や主婦たちによる「筆おろし」の箇所は読んでいて引き込まれほど艶かしいものがあります。なんというか、ほのぼのとした大らかな世界が、つい数十年前まで日本の特に農村部に風習として残っていたのかと驚きをもって読みました。
考えてみれば、『万葉集』においても16巻などでは、男女がそれぞれのあそこを題材に歌を詠んだりするなど、大胆豪放な世界が上代でも見られたことから、もしかしたら、実は日本人は昔から性にたいしては大らかで、それを現代の私たちも遺伝子の中に引き継いでいるのではないかと思いました。
「夜這い」の結果妊娠した場合の掟も、村落共同体を守るということが根底にあると思います。
民俗学者が触れなかった部分を実体験に基づいて書いているところにこの本のよさがあると思います。

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